5原則

では、あなたがトレイニーとしてここにいるとします。目標とするものを決めています。ちょっと手ごわいです。これからすべてが今をスタート地点として始まるのです。あなたはゴールを見つめています。ただただ目標に到達したときの喜びを思い巡らしています。でも、そこにたどり着くまでに、なにが起こるか予測もつかず不安です。前に同じようなことをしたときには、半分もいかない時点でやめてしまいました。今回もセルフコーチングで最後まで行けるのでしょうか。それを今回こそよい経験にし目標達成するためには、なにかよい指針や助けになることはないのでしょうか。

私は、大学院での研究期間からいろいろな教授職の経験と研究活動の分析によって、人がよりよい成長を遂げるためのエッセンスが存在するということに気づきました。これらは特にアクションリサーチの分析を通して明らかになってきました。しかしながらまとめてみると、これらは画期的な発明や発見という斬新なものではなく、むしろ私たちの心の隅にいつも潜んでいるもので、知源育の5原則はそれを呼び起こして、システムとしてまとめあげたものです。

第1原則 活動を自分のものにする

人は周りの圧力から、自分で納得していなかったことやしっかり決めていなかったことまで、なんとなくしてしまうこと があります。そんなとき当然の結果として、その活動に必要なエネルギーが内から湧いてこなっかったり、壁にぶち当たる度に、自主性を欠いた過去の決断を悔やんだりしてしまいがちです。一度実践に入ってから是非とも避けたいのは、そのようなエネルギーの低下です。

そのためにも、実践には今の正直な自分が反映されていてることが望ましいのです。つまり、それが、借りものや、いやいやではない、 「ほんとうに自分のものだ」と実感できるものであること、これがセルフコーチングの第一原則です。

自分が決心し、自分で目標を設定し、自分に合った実践プランを立てましょう。また、時間の経過によって自分も取り巻く状況も変わりますので、定期的にプランを見直し、大事な ものにフォーカスできるよう調整します。

第2原則 協力者、アイデア、宝は身近なところに発掘できる

プランを実践に移そうとするときに、あれがないから、これがないから前に進めないと考えたことはありませんか?でもちょっと考えてみましょう。今の生活空間と時間、また今日会った人々、学校で学んだこと、ネットで知ったこと。なんでも、いろいろな可能性を秘めたものが手の届くところに、案外たくさんころがっていることに気づきます。これらの手近にある、自分にとっての宝物を見出し活用すること、これが第 二番目の原則です。

プランを考え始めたとき、なにが使えるか思いつくまま書き出してみましょう。次に、それぞれが自分の届く範囲内のものと置き換えられるかチェックしてみます。考えられるだけ、すべての可能性を列挙してみましょう。このような活動がとてもおもしろく感じるようになったら、あなたはセルフコーチングを半分マスターしたようなものです!

第3原則 無秩序で予測不可能な現実から最大限学ぶ

私たちの実践には、急に邪魔があっちからも、こっちからも入ってきます。現実とはそのようなものです。あなたはどう対処しますか?それを素直に受け入れ て、その中から最大限のことを学ぶのです。現実は一見意味もなく無秩序になっているように見えますが、よく観察しますと、実は、豊かな学習の機会がその一見無秩序の中に潜んでいるのです。前向きで、心を開いてそれに対処するときに、かけがえのない学びが起こります。最大の学びは自分自身についてです。一生懸命 現実と取り組んでいるとき、自分自身をその現実の中にさらけ出していることになるのです。ですから、それに意識を向ければ、それ以外の状況では決して見出 すことの出来ない未知の自分にめぐり合えるわけです。そのようにして自分自身と自分を取り巻く状況についての知識が豊かになり、よりよく対処する方法を会 得することできれば、あらゆる物事に成功するための準備が整います。

第4原則 永遠の進歩はサイクルにそって

現行の教育は落伍者を生み出すシステムだと感じてしまいます。直線的に進むシステムです。A,B,Cというステップを進み、やがて目的のZに至るという風 に。問題は、人は誰でもつまずくということです。Dでひどくつまずくと、それから先に進むのが容易ではありません。E以降はDができていることを前提とし ているからです。知源育はサイクルで進むことを薦めます。自分の知識や精神的なものをありったけ使って目標を決めます。でも、完全なものは求めません。そ れから、(1)実行に移すための具体的な計画を立て、それに向けて(2)行動を起こします。さらには、(3)そのとき経験したことを振りかえってみるので す。これが1つのサイクルになるわけですが、このように3つの要素を含んだサイクルを繰り返しますと、らせん階段を上にのばるように限りなく高いところに 上っていかれるのです。

知源育でサイクルに従うとき、無理のない現実的な目標に向かって努力します。また、必ずしも100%達成できない現実もあることを快く受け入れて、 たとえ2−30%の達成度に終わるときがあるとしても、出来たことをちゃんと評価して前進します。とにかく、第3原則を応用すれば、現実のどろどろとした体験 の中からたくさんの気づきが起こりますから、その新たな気づきが加わって、より良い計画ができるようになっています。ですから、より現実的で、より緻密な 計画を練り直して、次の挑戦をします。ただし、自分を少しだけプッシュしてより高いところに進むことも忘れません。知源育においては、目標が絶えず進化し ます。繰り返しによっていろいろな力がつきますから、同じレベルにとどまっていることが出来ないのです。

無理して必死の努力をしてはいけません。やがて反動が起こって全部休止ということになりかねませんから。ですから、バランスよく、程よく努力を継続 するのです。結果は、スムーズに絶え間なく前進します。しばらくサイクルを繰り返してから、振りかえって成果を測ってみますと、驚くほどの成長をしている ことに気づきます。知源育のサイクルに乗って進んでいく限り、絶望的な失敗は縁のないものになります。このようにして、落伍者を出さない教育が可能になり ます。

第5原則 組織立った振りかえりにより新たな道を開拓する

周りを見まわしてわかるのは、たいていの人が規則的に進歩状況を評価していないということです。目標も持た ず、計画を立てて物事を進めることをおっくうがる人もいることは事実ですが、私のページを訪れてくださった方はきっと目標を立て、計画して努力した いと願っていると思います。ただし、計画倒れになってしまうということで、悩んでいる方もあるでしょう。私の知る限り、実行まで出来る人であっても、規則 的に振りかえる習慣がある人はほとんどいません。ですから、この原則を強調する意味があるのです。

カジュアルではなく、意味深い振りかえりにするために、3つのモードを使うことが役立ちます。英語にすると3つのRを持った言葉になります。 Record、Review、Reportの3つのモードです。Recordとは記録に残すことです。書くことや、コンピューターや携帯を使ってファイル を作ることでも、録音やビデオで記録することも含まれます。つまり、記録しながら振りかえるのです。そうすると振りかえりが深まり、緻密なものになりま す。Reviewとは古い記録を復習してみることです。何度も読み返し、聞きなおしているうちに記録したときには考えもしなかったことに目が開かれること を経験するでしょう。「初心忘るべからず」といいますが、この復習によって、以前に抱いていた願望や希望もよみがえってきますから、強い動機づけにもなり ます。Reportは自分が経験したことや記録したことをまとめて、第3者が読んでも分かってもらえるように、考えを整理して報告書を作ってみるのです。 まず第一の読者は自分自身です。別に他人に見せなくともいいのですが、見せれば見せたで、他の人からのフィードバックをもらうことが出来るでしょうから、 さらに効果的です。ところで、報告書を書くというと何か大げさな気がしますが、立派なものを書く必要はありません。考えを整理し、他人が読んでもわかるよ うに配慮し、日記を書くよりは少しだけ注意深く考えをまとめればそれで十分です。Reportというときには、他の人と雑談しながら自分の経験を分かち合 うというのもこのモードに入ります。そこでも有意義な振りかえりが起こるからです。

どうでしょうか?5つの原則は思ったほど目新しく専門的なものではないと感じた方もいらっしゃるでしょう。これらのアイデアは一見ありふれたものかもしれません。たいていの人は以上のことが大切であることはすぐ納得できると思います。しかし、それが上手に使え、習慣となって生活の中に浸透させるのには コツがあります。そのコツを見出すために20000ページにもおよぶ研究日誌を書いては振りかえりながら探し続ける必要がありました。今回初めて一般の方々に そのコツを披露する機会を得ましたことに感謝しております。