「語り」を使って進める

時々,考えに行き詰まりませんか?だれでも行き詰まりますよね。そんなとき,「語り」のテクニックを使ってみて下さい。あるアイデアを発展させたいとします。それについて漠然と考えているのではなくて,ある特定の人が理解できるように,頭の中でその人に語りかけるのです。そして,一通り話し終えたところで,その要点を書き出してみます。話し言葉なので,少し気が楽で,すらすらと流れてくることが多いです。正確にまともに話さなくても,一貫性がなくても大丈夫です。とにかく自分の知識や能力をつくして,語ります。語り終わったら,その要点を文字にします。それには疑問点やコメントを加えるともっと良いでしょう。

色々な作業をしながら,自分の脳がひとりでにこのテクニックを使ってレッスンや会議などの準備をしたりしていることがあります。これは極めて効果的な準備になります。ここで,「語り」と「記録」の2つのモードで考えることを心に留めておいて下さい。さらに,「復習」や「報告(単にキャジュアルにだれかとそのことについて話し合うことも含む)」をモードとして使って同じトピックについて考えるともっと考えが発展し深まります。

時間は均一に流れない

生産性は時々刻々変わります。それも僅かの変化ではなく,ある時には普段の何倍も高く,ある時にはただ息をしているだけということもあるかもしれません。これをよく理解する価値があります。自分がどのような時に生産性が上がるかを正確に知っていて,その時に大切な事柄をまとめてやることができます。集中力はやがて衰えます。その速さや程度は人によって違うでしょう。また,色々な内面的、外面的な要因もそれに影響します。もっと生産性を上げるためにどんな工夫をしていますか?振りかえってみましょう。

私の場合は,一日中短いサイクル(15分から30分)を創って高い生産性と集中力を保つようにします。特に身体的な活動と知的活動をサイクルにして交代させます。そうするとどちらの活動も疲れ過ぎることなく,高い生産性を保つことができます。肉体的に活発になった後は知的生産性も著しく高まるという研究報告があります。私は何度もそれを経験しました。休息も,仮眠も時には必要です。その後にリフレッシュして著しくやる気や生産性が高まるのを感じます。常にやる気が充実していて最大限の生産性で物事を進められるなんて夢物語です。しかし,できるだけそのレベルを上げる工夫はたくさんあります。

書くことで可能になる

ときどき書く効力を意識することが好ましい。記録の質についても評価してみましょう。多くのアイデアは生まれては消えるはかないものです。それを実現へつなげるには私たちのエネルギーを一定の方向に注ぐ必要があります。その鍵は意識をそのことに向けることです。どのようにそれができるのか?私たちの意識は,ほうっておくと,あらゆる方向に拡散します。大事なポイントに再び戻ってくる可能性もなくはないですが,保証はありません。それを確実なプロセスにするのが記録です。

空中にふわふわしているものを捕えて,それを加工して,建材として,1つ1つのブロックを積み上げて建造物にするのです。それがプロジェクトを進めていく時の記録の役割です。これがあるとナイトではプロジェクトの成果に雲泥の違いが出ます。よいスターターの役割,継続を促す力,完成度を上げる働きが伴っています。

ツール=スキルを磨く(3)

ネットワークを作るスキルは可能性を広げてくれる。大きなことをするには独力では無理。組織する力が求められます。自分はあまり社交的な方ではないから,新しい人々とあったりしてネットワーキングするのは苦手という人も多いかもしれません。私も研究室に閉じこもって勉強していることが好きで,外に出掛けるのはどちらかというと苦手でした。しかし,会社での役割の関係で,営業活動や,会社を代表して対外的な交渉に当たる経験が増えました。それで,ネットワークを作るスキルが徐々に高められました。

最初は初対面の人たちと会話を始めるのには抵抗がありましたが,今ではキャンパスのあらゆる人を掴まえて,話し始めるのが日常になっています。これはスキルです。最初は自分を強いてさせる部分もあるのですが,やってみると充実した学びが限りなく起こって来て,楽しい活動になります。上手な質問の仕方,話題の発展の仕方などに少しずつ目が開かれます。これらの短いコンタクト(道を歩きながらほんの2−3分,あるいは交差点での信号待ちの30秒だけということもある)を通して面白い情報がどんどん自分の中に流れ込んできます。大抵,対話の後に主な内容を記録しておきます。自分の語ることは相手の反応によって,あるいは相手を意識することによって特定なものに形作られるものです。相手があってのものであって,自分の発想が予測もしなかった方に発展することが面白いところです。

ツール=スキルを磨く(2)

物事をいかに発展できるかはローカリティーに含まれるスキルをツールとして上手に使えるかどうかにかかっています。そうでないと私たちの目の前に限りなくメンタルブロックが立ちはだかって,前に進むことができません。

周りを見渡してみましょう。一方には毎日のルーチンを繰り返すだけで受け身の活動に終始して人生を終わる人が圧倒多数を占めています。よい影響力のもとで努力している限り,そのような人たちも社会に貢献しています。しかし,他方には自分の能力を創造的に,能動的に使って多くの人々を感動させ,啓発し,向上させるすごい力をもった人々もいることは確かで,私たちの人生は大いに影響されます。

私が目指しているのは,接触する多くの人々が,それぞれの光を輝かし,独自な方法で後者のような強い影響力になってくれることです。知源育の第2原則がそれを支援します。記録のスキルを例にとってみましょう。特にこの20年あまり,私は記録することとともに人生を歩んできました。記録をつける習慣が職場での奇跡的な昇進,数十に及ぶプロジェクトが充実して進んでいく基礎にもなっていました。記録することが生活のアクセントであり,ゆとりであり,喜びにもなって,活動を支えてくれるようになりました。

ツール=スキルを磨く(1)

第2のローカリティーを豊かにするプロセスは知源育のプロジェクトを重ねることによってどんどん起こります。1つのプロジェクトを成功させるには何らかのローカルなスキルが発達するからです。ちょっと確認しますが,ここでいうローカリティーとは自分の身の回り(物理的あるいは心理的に,ないしは両方の面で)で自分と関係するあらゆることです。そのスキルには,体や頭や霊性を使って物事を進めるあらゆることが含まれます。時間の管理,コミュニケーション,組織力,説得力,あらゆる作業を進める力,処理する力,分析する力,観察力,整理術などが特に意義のあるスキルです。

つまり,自分のローカリティーが豊かになることによって,新しいプロジェクトを成功裏に進める力が見違えてきます。私の場合,知源育プロジェクトをたくさん経験するまでは,不器用な人間で,頭でっかちで実行力の乏しい人間でした。しかしローカリティーが豊かになるにつれて自信は測り知れないほど強くなったのです。根気よく知源育の原則に従って生きる努力をする人には同じようなことが起こるでしょう。

優れている人たちが成功できないのは?

前の「ヴィジョン」という投稿でも述べましたが,優れている人たちの才能が埋もれています。もっと社会に貢献する力がありながら,しかもアイデアを豊かに持っているのにもかかわらず,それが何らかの動きを生み出す力にならず10年1日の如く毎日のルーチンを続けています。

(1)一貫性のなさ,(2)記録に基づいていない,(3)組織する力に欠ける

以上の3つがその背景にあります。どうしたらそこから抜け出せるでしょうか?先ず,第2原則のローカリティーを豊かにしていることが役に立ちます。実行に移すための具体策が次から次へと生まれるからです。第4原則のPARの入ったサイクルを上手に回せば,だんだん力量が身に付いていきます。消極的になっているのは,第1原則によって自分のオーナーシップの確立ができていないので,自分の存在の底から限りなく出てくるエネルギーをうまく活用できないためです。第5原則の記録・復習・報告の3つのモードでの振り返りが日々起こっていると,考えや活動の詳細が記録に残っていますから,継続して一貫した活動ができます。

知源育の5つの原則に基づいて自己評価すると,世の中にインパクトとなる人になるための道が開けます。

整理術

近藤麻理恵のように深く突っ込んだわけではない。最近,片付けにある面白さが分かってきました。体調を崩してしまった昨年の失敗談からスタートし,生活のパターンが変わり,自分の身の回りに変化が生まれた結果です。嫌々ながらやっていた片付けから,生活のサイクルの一部として自動的に片付けのモードが入っていて,生活にアクセントを付けてくれます。

今,たくさんの出来事があった学期が終わろうとしていますが,身の回りはどちらかというと混沌さの方が勝っています。しかし,自分にとっての大切なものが整理されているので,記録の蓄積が進んでいて,特定のプロジェクトのファイルに手を延ばせば,豊かな情報がその中にすぐ見つかります。作業する空間があり,坐っても,立っても知的生産を続けられる便利さがあります。体にやさしく,大きな課題を処理するための作業場です。

整理術が少しずつ分かってきました。奥行きの深いものです。楽しみながら,自分の生活がダイナミックに変わっていくのですから,一石二鳥以上です。このようなスキルこそ,第2原則でいうローカルなスキルです。

ヴィジョン

私は絶えずたくさんの人々と親しく接し,彼らの語るのに耳を傾けるようにしています。毎年何百人もの人たちに語りかけていると思います。それで思うことは,それらの人たちがすばらしい才能を秘めていることです。しかし,自分では何も始められないと思っている人たちが大半です。才能があっても具体的に何か大きなことを始める力など自分にはないと思い込んでいるのです。ですから,かすかな願いはあるのですが,夢は夢であって,生まれては消えていく運命です。

知源育のたくさんのプロジェクトをやってみて,具体化する方法をコツコツと探しながら,5つの原則を当てはめてやってみると,意外な方法で道が開け,プロジェクトの成果が見えてくるというパターンを数多く経験しました。それまでのただ願っていただけの自分とどこが違っているかというと,先ず第1に,プロジェクトの土台になっている大きな目標についてのヴィジョンをはっきりさせることだと思います。書き出し,それを何度も復習し,報告のモードを使って他の人々ともわかち合い,フィードバックを受けるなどの方法をとりながら,ヴィジョンに肉付けします。しっかりしたヴィジョンがあれば他の人たちにも働きかけ,その人たちをも動員して自分ひとりではできない大きなことを達成することができます。ですから何かの変化を組織の中に創り出したりする力になるためには,先ずヴィジョンを確立することが大事です。

自己満足の克服

周りを見ていて思うのは,人は新しいチャレンジに挑むことを恐れたり,自分の生活が変わることに抵抗があることです。物理の慣性の法則が人間の習性にも当てはまっているのでしょう。一定の状態を保とうとする傾向です。知源育の第4原則は,絶えざる進化を促します。それは何もかも積み重ねて,あらゆることを同時に伸ばしていくことを示していません。それは不可能です。

第1原則に従い,よく吟味し,自分の生活をいつもシンプルなものにすることは常に続けているわけですから,ある活動は取りあえず停止させて,余裕を創り出すということも勇気を持って行なっているという前提のもとです。今集中しているプロジェクトでは常に自分の殻を破ろうではありませんか。それはできます。そしてとても心を躍らせる経験です。夢を描き,それを書き留め,復習し,発展させ,具体化させ,プランナーに入れ,モニターしていけば形になってきます。サイクルで進むので無理は要りません。