ユニークな状況に身を置いて

知源育を実践していて比較的素朴な方法で進んでいながらどうして思いがけずすばらしい理解が開けてくるのか不思議になりますが、そのへんのメカニズムを解明したいと思います。第4原則のサイクルですが、3つの要素があって、2番目の要素である「実践」が欠かせません。アイデアをいくら練っていても、それに関する情報をいくら集めても十分ではありません。実際に試すこと、自分の案と現実との接触を経験しないとだめなのです。

それはどういうことなのか、たとえを使ってポイントを掘り下げてみましょう。物事の見え方を、自分の周りの環境をいろいろな角度や場所から見ている状況に例えてみます。自分の部屋の窓から見える景色、近くのデパートの屋上から見る景色、東西南北いろいろな角度から見ることで見え方が大きく変わります。近くの丘の上から見たり、遠くの高い山の頂上から見ればまた違った景色が見えるでしょう。実践しながら自分の目の前に開かれる現実もそれに似て、自分がどこにいてどのような観点から見ているかによって大きく異なる現実が身の前に現れてくるのです。実際にはそれよりもう少し複雑で、自分がどのように活動をするのかによって、場所や自分の観点だけでなく見え方が変わるのです。ある特殊な理解や知識は、自分がそれに合ったユニークな状況に身に置くことによってのみ見ることができ、それ以外の方法では決して得ることができないのです。

聞き手とともに案を練る

前に聞き手や読み手がいることで新しい発想ができることを説明しました。ここでは、1つの案が何人かの聞き手に話すプロセスでだんだん充実したものになり、良いプランが生まれることについて書きます。私は職場でよくやることなのですが、1つのプロジェクトのアイデアが浮かんだとします。それを大きく発展しようとする訳ですが、いきなりそれを公の公式な場で発表して恥をかくなどと言うことがないように知源育のテクニックを使うのです。そうですサイクルを創って進めます。

まず、自分の頭の中で、ソロ・ブレーンストーミングを始めます。案が少し形をなしてきたところで、同じ部署の同僚や部下にキャジュアルに話してみるのです。舌足らずで、多少誤解していたり理解の浅い部分があっても気にせず、さっき考え始めたばかりのことなのだけどとか前置きして話します。おもしろいことは、説明しているプロセスで自分の頭が整理され、おまけとして、相手からいいフィードバックや新しいアイデアをもらえることもあるのです。話し終わった直後に、私はその内容やもらったコメントなどを記録しておきます。それをもとに、今度は別の部署の人たちとか上司に同じような内容のことをより洗練した形で伝えるのです。もちろんそれぞれの話し合いの直後に正確な記録を残すことを忘れません。このようなことを何回か繰り返し、その間に関連の資料に目を通すなどをすることでかなり良い企画案が比較的短期間に生み出されます。

熟した時

どんなにすばらしいアイデアでも時が熟していないといくら努力しても実現しません。ごり押しで無理をしても意味がなく、無駄や失望が生まれるだけです。第5原則の二つ目のモード復習(Review)が意味を持つのはそのような状況です。知源育のプロジェクトでは記録が不可欠で、実践の中で生まれる様々なアイデアは記録に残ります。そういう習慣のない人たちもたくさんのアイデアに巡り会うのですが、記録をしないためにしばらくするとほとんどのことを忘れてしまいます。ものすごく記憶力のいいと言われている人たちでも同じであることが分かってきました。

知源育を実践している時には記録を、古いものも含めて、定期的に復習しますから、もうすっかり意識の中から消え去ってしまったようなアイデアでも時々思い出すことができるのです。時間の経過とともに前に考えていたあれこれのアイデアのためのときが熟してきます。そして、相応しいときだと感じて実行に移してみるとスムーズに実現させることができ、忍耐強く温めてきたアイデアが実行に移せた喜びに感動するでしょう。待てば待つほど喜びは大きなものとなります。

進歩の不連続性

ちょっと分かりづらいタイトルですが、規則正しい努力をしていても進歩の方は規則正しくは起こらないのが普通です。思わない時に思わぬ方法で変化が起こることがよくあります。そのことを不連続性という言葉で表してみました。アイデアが生まれるのも同じで、壁にぶつかったように長い間全然いい考えが生まれない時もあれば、電光石火のごとく一連の目覚ましい発想が浮かぶこともあります。

得てして、そういうアイデアが体調のよい、気分が新鮮であったり、リラックスしている時などに浮かぶ可能性が高いように思います。ですから、身体を日頃から鍛え、十分な休息を取ることなども大切な準備です。

サイクルとスピリチュアルな創造

知源育のサイクルは何であったか思い出します。どのような活動でもそれをサイクルに変換できます。ポイントは3つの要素を入れることです。もっと単刀直入に考えると、「ストップ!」の信号を自分に対して発することで、区切れを作ることです。立ち止まって考える、それからその結果に基づいて次のステップを始めます。そのように続ければらせん階段を上って行かれます。

神様は全ての創造をまずはスピリチュアルなレベルでなさり、それから具体的な物理的な創造を始められました。それも秩序正しく6つの段階を経て着実に行われました。さらには休息を取られ、創造の業を振り返られたのです。そこに永遠の進歩発展のパターンが示されています。知源育では、そのパターンにならって、準備計画をあたかもスピリチュアルクリエーションのように行います。それから実践ですが、それは相応しいステップを踏んで進めます。それから、業をいったん休めて振り返るのです。準備計画をスピリチュアルクリエーションと見なすと創造性と動機づけが起こって楽しく充実したものになるでしょう。

聞き手に応じて

振り返りをしていて思います。たくさんのアイデアが次から次へとどこからともなく浮かびます。頭の中でぼんやりと考えていた時にはとても期待できないようなところから新しいヒントがでてくることもしばしばです。第5原則の3つ目のモードの一つを思い出してみましょう。3つ目のRはレポートのRでした。これには自分の経験や考えたことを他の人と分かち合うことも含まれます。

面白い現象は読者や聞き手を念頭に置いて自分の伝えたいことを話していると、自分が考えもしないだろうと思われることを話しているのに気づいて驚くことです。そうです、自分の頭を相手にあわせて整理しているうちに新しいアイデアが生み出されるのです。このテクニックを応用してみてください。

受け皿

知源育に従った計画をしていますと、記録しながら、たくさんの疑問について考えながら進める訳ですが、私たちの意識は特定の情報を得ようと構えるようにセットされます。それができていますと、日常生活を営みながら、思わぬところで出会う情報の中から、ねらっている情報をキャッチすることができるのです。漫然と見過ごしている現実の中からたくさんのきらりと光る宝を見つけることができ、日常生活の充実度も増します。しかし、その受け皿ができていないと情報は右の耳から左へと流れ出して失われてしまうのです。

夢の具体化

知源育とは何かと聞かれて、「夢実現の仕組み』と説明することにしています。それはどういうことなのでしょうか。私たちには潜在的な可能性があります。私たちには夢や望みがあります。あることを達成することが、第1原則に沿って望ましいことであるならば、そのことに十分な努力を向けることが相応しいことでしょう。ならば、その夢実現は知源育を用いればより確実になるはずです。

この達成のメカニズムを考えることは楽しみな経験です。夢という抽象的なものがあり、それに向かって努力を始めるのですが、「絵に描いた餅」とか「机上の空論」とかいう表現が示すように、夢が夢のままで終わって実体とならないことが私たちの身の回りには頻繁にあるのですが。。。そこでは、雲をつかむような存在を定着させて具体化する力が求められます。関向とか問設とかQ&Aとかソロ・ブレーンストーミングなどのテクニックを使いながら進めると、具体化への様々なステップが見えてきます。夢実現に向かって今すぐできることが明らかになります。それを知源育のサイクルに乗せて、コツコツと続ければ、いつしか成果が出始めます。

プロセスの中に

プロセスについては前に、3月の投稿で書きました。今回はそのもう少し詳細に迫ります。活動が一段落して、そのプロセスを振り返ります。描写しながら振り返ると、普段見過ごしてしまいそうな細かい点に目が向けられます。しかもそれらの点には後になってから戻って来て何度も違う観点から考えてみることが可能になるのです。このようなものの見方が定着しますと、他の人が同じことをどのように行うのかを観察するための着眼点が育ってきて、自分の理解力がさらに高められるのです。知源育では結果だけでなくそのプロセスに注目するように心がけます。それが実は目的達成のための確実な基礎作りとなるのです。

メンタルブロックを乗り越える

前回、メンタルブロックが引き延ばしを生じさせていることに触れました。解決方法に進む前にメンタルブロックがどのように起こっているのか観察してみましょう。不器用であった私はものの修理や改良などは後回しにする傾向がありました。忙しく働いて、運動などの活動はまったくおろそかになっていました。しかし、知源育のプロジェクトとして、スポーツと日曜大工についてたくさんの企画を実践したことで、今ではこの二つの領域に関しては、引き延ばすこと無く、率先して、しかも気持ちよく楽しんで作業や活動が進められます。プロジェクトにしたことでメンタルブロックを克服できたのです。今チャレンジしているのは、身の回りの整理と片付けです。生来あれこれに手を出して、身の回りにやりかけのものが山のように雑然と積まれてしまうという問題があります。

今その傾向を徐々に克服しつつあります。ものすごいチャレンジであり、面白いプロセスでもあります。ポイントは、適切に的を絞り、日常生活のパターンの中で、一定の無理の無い時間を適切に割り当てることです。私の場合、いろいろ忙しくあれこれの活動をしていると、どうしても片付けが後回しになって、いつまでも引き延ばしが起こります。成果が出始めたきっかけは、まず、ブレーンストーミング的に問題状況について分析しました。そして、だらだらといろいろな活動に時間を使ってしまう傾向のある自分にでもできる方法は、5分のタイマーをカチカチ鳴らせながらその間だけ集中して片付けをするというものでした。出がけの慌ただしい時や、夜かなり疲れている時でも、5分だけであればなんとかやってみるかという気持ちが出てきます。5分が終わるとピンという音が出てきますから、そこで作業をストップします。そんな簡単な仕組みを作ることで、なんとか整理の苦手な自分が変わりつつあります。